AMS企画株式会社(本社:東京都港区、以下「AMS」)は、ポジトロン放出核種ガリウム68(68Ga、半減期68分、消滅放射線511 keV)で標識するPET診断薬を院内製造する際の手指被ばくを低減するために、診断薬調製キットバイアルを簡易に攪拌する装置のプロトタイプを製作しました。
AMSは、北大発核医学ベンチャーとして、2019年より前立腺特異的膜抗原を標的とするPET診断薬68Ga-PSMA-11、2023年よりソマトスタチン受容体を標的とするPET診断薬68Ga-DOTATOCの開発に取り組んでおり、海外で医薬品として承認されたPET診断薬の合成装置を我が国で医療機器(クラスIII 高度管理医療機器)として薬事申請するための実務経験を有しています(1)。昨今、68Ga標識PET診断薬の院内製造現場では、合成装置のみならず診断薬調製キットを用いた薬剤製造でも、68Gaの511keV高エネルギーγ線による放射線被ばくを懸念する声が寄せられています。AMSは、「68Ga標識PET診断薬を早期に患者様にお届けする」というミッションの下、診断薬調製キット使用時の手指被ばく低減についても検討を行って参りました。今回製作したPET診断薬調製キット向けプロトタイプ撹拌機は、68Ga溶液をPET診断薬調製キットバイアルに添加後の標識操作(=攪拌)をクリーンベンチ内で自動的に行う装置です。作業者が遮蔽容器に入った調製キットバイアルを直接手に持って撹拌する作業を想定した場合、この作業を本装置に任せることにより、毎日院内製造を行う作業者の安全確保及び手指や全身の被ばくを低減する効果が期待されます。
福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター・先端臨床研究センター志賀哲教授は、今回のプロトタイプ製作について、以下の通りコメントしております。
「昨今、我が国では、SPECT検査に使用されるγ線放出核種と比較して、より透過度の高いポジトロン放出核種(68Ga)を使用した放射性医薬品診断薬の特定臨床研究及び治験が活発に行われており、それに伴い、標識を担当する現場の薬剤師の方々から、手指の放射線被ばく低減に関する相談・要望が寄せられております。欧米では、68Ga-DOTATOC及び68Ga-PSMAの調製用キットを用いたPET診断薬の製造は、主にRadiopharmacyと言われる専門施設で専門スタッフによって安全に行われ、その手軽さから普及しております。一方、我が国では各施設において一般の薬剤師により院内製造している現状もあり、より安全に標識キットを使用できる環境整備が望まれております」
AMSは、今回製作したプロトタイプから更に改良を進め、完成を目指してまいります。